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呼吸がおかしい神経内科の病気 [神経内科の病気]

 枕元で電話が鳴った。出ると当直看護師からである。

 「どうしました?」 当直医は訊いた。 「今、患者さんが見えて、息苦しさを訴えておられますので……診ていただけませんか? ボーイフレンドといたそうなんですが……喧嘩になって部屋を飛び出したら、まもなく息が苦しくなったとのことです」 看護師は答えた。

 当直医の桜井医師は、眠気を払いながら、外来へと向かった。時計は午前4時を少し過ぎていた。

 桜井が外来の診察室に入ると……一人の患者が待っていた。横に電話をかけた看護師がいた。 「サチュレーションは異常ありません」 看護師は桜井に言った。看護師は、患者が息苦しさを訴えていたので、指先で血液中の酸素濃度を測ってみたが、異常はないとのことである。

 桜井は患者を見た。若い女性である。息が荒く、肩で呼吸をしている。 「息は吐くのはできて、吸っても空気が肺に入っていかない感じでしょう?」 桜井は座りながら訊いた。 「はい、そうです」 患者は答えた。

 聴診器で呼吸音を聞くと……呼吸数は多いが……呼吸音自体に異常はない。「手先がしびれませんか?」桜井は訊いた。 「ええ、手足の先の方、さっきから口の回りも少し……」 患者は答えた。

 診断は、『過換気症候群(かかんきしょうこうぐん)、Hyperventilation syndrome』 である。何か思うようにならないこととか、不安感がつのっておこることが多い。女性に多い病気である。

 息が吸い込みにくくなって(感覚的に)、息を吸おうとはげしく息をしていると、血液中の二酸化炭素濃度が低くなり、手足や口周りの血管が収縮し、そのためにしびれ感が生じて来る。

 治療法としては、以前は、紙袋を口にあててゆっくりと呼吸をしてもらうことが多かったが……最近では紙袋は使わず、ゆっくりとした呼吸を促すことで症状の改善を待つことが多いようである。場合によっては、抗不安薬などが投与されることもある。

 私の場合、夜間の当直で、この病気の患者さんのために二度ほど起こされたことがある。特に重篤な病気ではないし、診断も容易なので、負担はそれほど感じなかったが……睡眠時間が小一時間ほど減って、翌日の午前中、少し眠かったのを記憶している。

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