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難しい神経内科の病気 (6) [神経内科の病気]

 診察すると……患者の右半身に脱力がある。〈脳卒中か?〉 

 「右の手足に……力、はいりにくいでしょう?」 医師が訊いた。 「ええ」 患者は答えた。 医師はさらに訊いた。 「いつからですか? 脳梗塞か……脳出血の発作ありました?」 「いいえ、そんな発作なんてありませんが……いつからと言われても、だいぶ前からですが……」 患者は無表情に答えた。

 〈いつからか、わかんないなんて……よし、MRIだ〉 医師は迷わずMRIの検査箋を書いた。 〈これで、病巣が見つかるぞ!〉 医師には確信があった。 〈こんな片麻痺があるんだから、MRIで病巣が無いはずはない)

 MRIが終り、フィルムが医師の元に運ばれてきた。 〈さあ、どこに所見が……〉 医師はゆっくりと袋から幾つかの条件で撮られた数枚のフィルムを取り出した。そして、それを灯りにかざして、画像をながめ始めたが、 その表情に変化がおきた。 最初は余裕のあった顔に、焦りの色が浮かび、最後は首をかしげた。  MRI検査では、特段の病変は見つからなかったのだ。

 フィクション仕立てで恐縮だが……この患者さんの病気も難しい神経内科の病気の一つ……その名前は……大脳皮質基底核変性症(だいのうきていかくへんせいしょう)という。英語名は、Cortico-basal ganglionic degeneration、略して、CBD(スィービーディー)である。

 この病気は、いつとはなく始まる。発症の仕方が、突然おこる脳卒中とは、全く違っている。大脳皮質に病変がおこるので……半身の筋力の低下、つまり片麻痺がおこる。

 もう一つ、基底核にも病変がおこるので……パーキンソン症状として、手足の筋肉に硬さが出て来る。これは、脱力のある側に、より強く出るが、筋力は正常と思える側にも、細かに診ると硬さがみられる。そして、症状は、最初は片側だけのように思えても、最後は両方の麻痺となっていく。

 この病気では、神経内科医が診れば、明らかに片麻痺とそちらに強い四肢の筋肉の硬さがあるのに、CTやMRIでは所見がはっきりしないのも特徴である。PETとかSPECTとかいう最近はやりの高度な画像検査も、神経内科医が浮き彫りにする所見に比べれば、たいした威力は発揮できない。神経内科医、面目躍如の病気である。

 診断はできても、確たる治療法がないのが今は残念だが、いずれ治療法が確立した暁には、神経内科医の価値がさらに上がる……だが、それは、いつのことだろうか?

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