地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第90回) [ミステリー]
「赤く光る男の眼……それは、怨霊の眼か……」
唐沢がつぶやいた。
〈赤く光る眼?〉
佑太は、小柴垣の小路で、もやの中に見た赤く光るものを思い出していた。
「ということは、落雷にあって、池に落ちて亡くなった……ということですか?」
佑太は訊いた。
「ええ、そうです。 池から引き揚げたときには、息はありませんでした。 ですから、他殺でも、自殺でもありません、明らかに事故死ですね」
毛利は断定するように答えた。
「他に、何か変わったことはありませんでしたか?」
黙って聞いていた杏子が訊ねた。
「変わったことですか……ああ、そう言えば、目撃者の中に、おかしなことをいう人がいましたね」
「おかしなこと?」
「ええ、その人が言うには……落雷の音がして……人が池に飛び込んだような音がした直後に、池の真ん中あたりの水が盛り上がってきて、恐竜のようなものが見えた。 それも、黄金色をした恐竜のようやったが、もしかしたら池に棲む善女龍王様じゃなかったのかと、そう言うてましたね。 その人は、吉本が池に落ちるところは見ていないのですが。 雷がなるし、雨はじゃあじゃあですから、そんな時はいろんなもんが見えるのかもしれないですね、ハッハッハハ」
毛利の笑い声を聴きながら、杏子と佑太は、斎王の力で京都の地脈の乱れが治まったことを確信していた。
「安藤先生、先生は、何か気になることでも? ちょうどタイミング測ったようにここに来られたようですが」
毛利は、自分の話を聞いて、佑太と杏子の表情が変わったのに気づいていた。
「毛利さん、頼みたいことがあるのですが……」
佑太は、はぐらかすかように言った。
「何でしょうか? 私にできることであれば……」
「吉本辰夫の様子に、最近、何か変わったことがなかったかどうか、それと……彼のパソコンの使用履歴、ゲーム機など調べていただけませんか?」
佑太は言った。
「先生、先生は何か?」
「これは、あくまで、僕の勘なんですが……あの事件の背後にいたマスター、もしかしたら……」
「先生、まさか……先生は、マスターが吉本辰夫だと?」
「ええ、僕には、そう思えるのです」
「分かりました。 先生がそう思われるのであれば、早速調べてみます。 で、先生は、嵯峨野の方も土砂降りで、観光どころじゃなかったんでしょうけど……これからどちらへ?」
「僕ですか……僕らは、このまま、ホテルへ戻ることにします」
「先生は、いつまでこちらに?」
「あと数日はいます。 ですから、何か分かりましたら、ご連絡願えませんか?」
「分かりました。 さっき仰せつかったこと、判り次第、ご連絡します。 それから、如何です、課長が一席設けろと言ってますので、ぜひ。 唐沢も今度の件で、新婚旅行が邪魔されて、うちから帝都警視庁にお礼がてら話したところ、休暇の延長が認められまして、皆一緒ですが、如何でしょうか?」
「ええ、そうなんです。 このまま、帰ったんじゃ、美香が怒り狂いそうでしたから、ほっとしています、はい」
唐沢が、眉尻を下げて言った。
「そうでしたか、分かりました。 それじゃあ、ぜひご一緒させてください」
佑太は快諾した。
続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14-1
唐沢がつぶやいた。
〈赤く光る眼?〉
佑太は、小柴垣の小路で、もやの中に見た赤く光るものを思い出していた。
「ということは、落雷にあって、池に落ちて亡くなった……ということですか?」
佑太は訊いた。
「ええ、そうです。 池から引き揚げたときには、息はありませんでした。 ですから、他殺でも、自殺でもありません、明らかに事故死ですね」
毛利は断定するように答えた。
「他に、何か変わったことはありませんでしたか?」
黙って聞いていた杏子が訊ねた。
「変わったことですか……ああ、そう言えば、目撃者の中に、おかしなことをいう人がいましたね」
「おかしなこと?」
「ええ、その人が言うには……落雷の音がして……人が池に飛び込んだような音がした直後に、池の真ん中あたりの水が盛り上がってきて、恐竜のようなものが見えた。 それも、黄金色をした恐竜のようやったが、もしかしたら池に棲む善女龍王様じゃなかったのかと、そう言うてましたね。 その人は、吉本が池に落ちるところは見ていないのですが。 雷がなるし、雨はじゃあじゃあですから、そんな時はいろんなもんが見えるのかもしれないですね、ハッハッハハ」
毛利の笑い声を聴きながら、杏子と佑太は、斎王の力で京都の地脈の乱れが治まったことを確信していた。
「安藤先生、先生は、何か気になることでも? ちょうどタイミング測ったようにここに来られたようですが」
毛利は、自分の話を聞いて、佑太と杏子の表情が変わったのに気づいていた。
「毛利さん、頼みたいことがあるのですが……」
佑太は、はぐらかすかように言った。
「何でしょうか? 私にできることであれば……」
「吉本辰夫の様子に、最近、何か変わったことがなかったかどうか、それと……彼のパソコンの使用履歴、ゲーム機など調べていただけませんか?」
佑太は言った。
「先生、先生は何か?」
「これは、あくまで、僕の勘なんですが……あの事件の背後にいたマスター、もしかしたら……」
「先生、まさか……先生は、マスターが吉本辰夫だと?」
「ええ、僕には、そう思えるのです」
「分かりました。 先生がそう思われるのであれば、早速調べてみます。 で、先生は、嵯峨野の方も土砂降りで、観光どころじゃなかったんでしょうけど……これからどちらへ?」
「僕ですか……僕らは、このまま、ホテルへ戻ることにします」
「先生は、いつまでこちらに?」
「あと数日はいます。 ですから、何か分かりましたら、ご連絡願えませんか?」
「分かりました。 さっき仰せつかったこと、判り次第、ご連絡します。 それから、如何です、課長が一席設けろと言ってますので、ぜひ。 唐沢も今度の件で、新婚旅行が邪魔されて、うちから帝都警視庁にお礼がてら話したところ、休暇の延長が認められまして、皆一緒ですが、如何でしょうか?」
「ええ、そうなんです。 このまま、帰ったんじゃ、美香が怒り狂いそうでしたから、ほっとしています、はい」
唐沢が、眉尻を下げて言った。
「そうでしたか、分かりました。 それじゃあ、ぜひご一緒させてください」
佑太は快諾した。
続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14-1
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