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薬剤でおきる神経内科の病気 (2) [神経内科の病気]

 病棟の看護師詰め所に行くと、一人の看護師が寄ってきた。「先生、一人、診ていただきたい患者さんがいるんですが……」 看護師は言った。 「いいですよ、で、どんな患者さんですか?」 神経内科医桜井は訊いた。

 「運動器のリハビリで入院された患者さんなんですが……ふるえがあるんです。パーキンソン病の疑いがあるから、先生に診てもらってくれと……主治医からの依頼です」 看護師は答えた。 「ふるえですか? じゃあ、とにかく、診察させてください」 桜井は言った。

 患者は転倒による大腿骨頚部骨折(だいたいぶけいぶこっせつ)の術後で、リハビリ目的で転院してきたのだが、前の病院にいたときからあったふるえが、転院後、ひどくなったとのことだ。

 診ると、確かにふるえがあるが、パーキンソン病でみられる手先中心のふるえではなく、身体のふるえである。 「歯がふるえて、ガチガチ鳴ること、ないですか?」 桜井は訊いた。 「ええ、歯が鳴ることあります」 患者は答えた。

 「患者さんの服用されている薬に、抗うつ薬、入ってませんか?」 桜井は訊いた。 「抗うつ薬……ですか? ちょっと、待ってください」 看護師は患者のカルテをめくって、患者が飲んでいる薬剤リストを探している。

 「ああ、これですね。ええーっと、ああ、飲んでおられますね、抗うつ薬、確かに」 看護師は桜井に薬剤リストを見せながら言った。

 患者さんは抗うつ薬の副作用によるセロトニン症候群のため、身体がガタガタと震えていたのである。

 私の場合、身体のふるえを訴える患者さんを診た時には、必ず、抗うつ薬を飲まれてないか、確認することにしている。

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