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忘れてはいけない神経内科の病気 [神経内科の病気]

 昭和30年代から40年代にかけて国内で奇妙な病気が発生したことがある。

 患者は腹痛、下痢といった腹部症状があり、数週間の経過で足の先の方から痛みを伴った異常な感覚と脱力、そして、視覚障害が進行し、重篤な後遺症を残す病気だった。原因はわからないが、はやり病のように広がっていった。だが、しばらくは原因はわからなかった。

 診察した医師が、患者の口の中を見ると、舌が緑に染まり(緑舌)、便も緑がかっていた。この緑色が原因特定の手掛かりとなった。緑色の正体は、キノホルムという物質と鉄の化合物だった。そして、疫学調査が大きな力を発揮し、キノホルムが原因物質と特定された。

 キノホルム……それは、患者たちが飲んだある整腸剤、下痢の薬である。キノホルム?……そんな薬あるの? そう言われる若い方も多いかと思う。今は販売されていない、製造中止となっている。中止されたのは1970年、だいぶ前のことである。

 中止されて、この病気にかかる人はいなくなった。やっぱり、そうだった……薬害である。

 この病気の名前は……スモン(SMON、subacute myelo-optico-neuropathy)……スモンが正式名として使われている。

 偉そうに、私は、解説しているが、実は発症時の患者さんを診察したことなどない。診たのは、後遺症で苦しむ患者さんたちである。全盲に近い方もおられた。

 現在、患者さんのかなりの方は、亡くなって行かれ、いずれは患者数ゼロとなり消え行くはずの病気……だが、薬害の原点として……忘れてはならない病気だと……私は思っている。

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