SSブログ

難しい神経内科の病気 (1) [神経内科の病気]

 神経内科では、昔、難しい病気が多かった……だが、それは、今でも多い。

 その筆頭にあがるのが……筋委縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)である。英語名は、Amyotrophic lateral sclerosis 略してALS(エイ、エル、エス)となる。医療従事者の間では、アミトロと言われることもある。

 この病名、患者さんの症状と病変部の外観を表している。Amyotrophyは患者さんの身体の各所に起こる筋萎縮のことで、lateral sclerosisとは、脊髄の側索(lateral fasciculus)が変性のために硬くなる(sclerosis)ことを意味している。側索には、大脳の運動神経細胞の線維が束となって降りてきている。そこが硬くなるのである。

 この病気では側索も硬くなるが、一番の病変は、脊髄や脳幹にある運動神経細胞におこる。直接筋肉を動かす運動神経細胞が、不明の原因で死んでいく。手足を動かすための筋肉、食事を食べて飲み込むための筋肉、呼吸をするための筋肉、などなどあちこちの筋肉が衰えて行く。

 眼を動かす筋肉は、最後まで頑張っているが……それも、人工呼吸器で延命していれば、動かなくなる。最後は、外に向かって何にも伝えられなくなる。なのに、外からの刺激はすべて感じられる。身体のあちこちにおきる、痛み、かゆみ、不快感、すべて感じることができる。だけど、それを、解消できない。解消してくれるように、頼むこともできない。そんな病気である。

 この病気、ゲーリック病とも呼ばれた。「ゲーリック」とは……昔のニューヨークヤンキースの黄金時代を背負い、ベーブルースとクリンナップを組み、鉄人と言われた、ル―・ゲーリックのことである。彼は、この病気のために野球人生を終えざるを得なかったのである(もちろん、それが死因となっているが)。

 この病気、今でも確たる治療法がない。治療薬は一応開発はされたのだが……とても患者さんたちが満足できるレベルのものではない。だから、私に言わせれば、今でも一番難しい病気である。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。