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ちょっと気になる神経内科の病気(11) [神経内科の病気]

酒の害:パート3

 自分のやってることを記憶できない『健忘』……こちらから、ちょっとした話題を提供すると、それから派生して次々に作り話をしていく不思議な症状である『作話』、そういった症状を呈するコルサコフ症候群という酒の害もあるが……それは、神経内科よりも精神科にかかられていることが多い。実は私が経験したのは、ウエルニッケ脳症の意識障害が回復して、コルサコフ症候群に移行した患者さんくらいである。つまり、実際の主治医になったのは、一人の方だけということだ。
 
 私の外来で、最も多い酒の害は、多発神経炎である。多発神経炎(たはつしんけいえん)……これは左右対称性に、手足の先の方から脱力や感覚の鈍さやぴりぴり・じんじんといった異常感覚が、徐々に体幹に近い箇所へと上行してくる病気である。

 この原因は、それこそいろいろで、別に酒ばかりが原因ではなく、むしろ、他の原因のことが多い。糖尿病、内分泌系の病気、薬物、毒物などいろいろで、原因不明のことも多い。

 しかし、私の場合、診察をして、この多発神経炎の症状がみられたら……必ず、飲酒についてお話を訊くことにしている。酒を飲んでいるかどうかは、皆さん、躊躇なく答えられる。全く飲みません……ときどき……なかにはかなり飲んでおられることを堂々とおっしゃる酒豪の患者さんのおられる。

 だが、具体的に飲酒の量をお訊きすると……多発神経炎をおこしておられるような酒量の方は、たいてい、少なめの申告が多い。うしろめたさがあるのである。ご家族が付いてきてある時は、家族の方の表情に苦笑いが浮かんだり、患者さんの申告を否定するような言葉を口にされる場合もある。

 酒でおこる多発神経炎の場合、原因はほぼビタミンB1の不足。治療はその補充となるが、もちろん、酒をやめていただくのが最良の治療である。断酒ができても、もちろんビタミンB1の服薬は必要で、治療が進めば、症状の改善が期待できるが……完全に治るのは難しいようである。
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