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神経内科に来る患者さんの症状(6) [神経内科の病気]

 頭痛、めまい、しびれ、ふるえ……と私の外来の新患の方の訴えの多いものを挙げてきたが、最近増えているのが『物忘れ』である。ご本人によれば「自分のものをどこに置いたのか、分からなくなった」……ご家族が言うには「何度も同じことを聞きなおす、さっき言ったのにもう忘れている」である。……物忘れの程度もいろいろで、自分で自覚があるうちはよい方で、症状が重度になると、病識(自分が病気であるという自覚)もなく「何も異常はありません」などと述べられて、隣でご家族が困った顔をされる……そんなことも、ちょくちょくである。診断は認知症である。
 患者さんは、まず75歳以上の方がほとんどで、その場合、介護にあたられる方、身近な方は困られているが、社会的な影響は小さくなっている。だが、患者さんが若くなると、深刻な問題が出てくる。現役で仕事をしておられる場合、職場で支障をきたし、仕事ができないとなると経済的にも影響が大きいのである。そのため、診療にあたる我々医師の気持ちも暗くなる。なんとかしてさしあげたいが、今の認知症の薬では、多少症状は改善することはあっても、根治療法ではない。人生の残りが長いので先々のことを考えると、せめて現役の間くらいは仕事に支障がないようにならないものかと考えてしまうのである。
 その点、患者さんが80過ぎの方だと、診療する側は少し楽な気持ちになる。近年の認知症の薬は、種類も増え、結構効果もある。認知症の進行を抑えるだけでも、多少症状が改善するだけでも、ご家族には福音である。効果があって、ご家族の顔が明るくなることもしばしば経験している。
 認知症の診療では、このように、患者さんの年齢によって、診療の雰囲気、風景はずいぶんと変わってくる。
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