SSブログ

地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第93回) [ミステリー]

 すると、宴席の下座にいた香取が、手を挙げた。

「はい。私もそう思います。 天竜寺の北門から出て、突然、お二人とも姿を消されて……野宮神社でも、私が駆けつけた時は幾ら探しても姿が見えなかったのに、雨の中、突然眼の前に姿を現されて。 あの時は、どうしてか、判らなかったのですが、課長が今おっしゃったので、私も勘が閃いて、きっと超能力だ、そう思ったんです」

「なんや、香取、お前も勘かいな。 でもな、先生の勘とちごうて、お前の勘はあてにはならへん。 こないだも、『私の勘では、マスターは、三十代か四十代の男に間違いない』 って、言ってたやないか。 そやから、お前の勘は信用ならへん」

 桜井が決めつけるように言うと、香取は頬を膨らませた。

「おい、香取、お前、そんな顔するから、男がでけへんのやで。 唐沢さんの奥さんに頼んで、一度、男口説く方法でも、教えてもらえ、ええな。 ワッハッハハ」

「課長、それは、セクハラです。 それに、唐沢さんの奥さんにも失礼ですよ、ねえ」

 香取は美香に同意を求めたが、美香は、大きな身体をすくめて、顔を赤くしただけである。

「いやあ、うちの美香は、凄腕ですよ……実はね……痛っ」
 
 唐沢が、自分たちのなれ初めを披露しようとすると、美香の太い指が、彼の太ももをつねりあげていた。

 唐沢と美香が結婚することになったのは、飲み会のあと、唐沢が酔った美香から無理やりホテルへ連れ込まれたのが、きっかけだったのである。

「ところで、あの六条河原で吉本敦子が見たという三人の武将の姿。 あれって、六条河原に巣くっている怨霊だと、思うんですよ、私は。 ところが、ほんとに見たのは吉本敦子だけ。 なのに、他の四人は、マスター、つまり吉本辰夫に指示されて、見たように証言した。 吉本敦子が怨霊を見たのは納得するとしても、なぜ辰夫がそれを予知するようなことを指示したのか? そこが……私には……説明できないんですよね、うーん」

 太ももをさすりながら、唐沢が言った。

「唐沢さん、敦子と辰夫は姉弟ですよね。 そして、ご先祖は石田三成の家臣。 だから、怨霊が石田三成だったとしたら、それで説明がつきませんか」

 佑太は言った。

「なるほど……石田三成の怨霊は、彼の家臣の子孫の二人だからこそ見えたし……存在も知り得た、そういうことですか。 なんか、安藤先生が説明されると、素直に腑に落ちますね」

 唐沢は、納得したのか、頷いていた。

「そう言えば、辰夫の部屋には、黒魔術だなんだのと、変な本がぎっしりと積まれてましたよ。 その中身をうちで調べてみたんですが、ありましたよ、三匹の猫を生贄に悪霊を呼び出す儀式が。 辰夫は、そこに赤でチェックを入れてました。 だから、あの三匹の猫の死体は辰夫にとっては意味があったんですよ」

 毛利が言った。

「へえー、それじゃあ、その儀式が怨霊を呼び寄せたってことになりますよね、先輩」

 唐沢は、さらに納得した顔になった。
                   続く⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17-1
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。