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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第89回) [ミステリー]

 境内に入ると、見知った顔がある。 毛利と唐沢である。 二人は、池の中に突き出た場所を占める社の前にいたが、佑太たちの顔を見つけると、揃って会釈を送ってきた。

「毛利さんも見えてたんですか?」

 佑太は訊いた。

「ええ、正面橋事件と関係があるかもしれませんので……」

 答える毛利は、悩ましげな顔である。

「正面橋事件とですか?」

 佑太は訊いた。

「死んだのは、吉本辰夫なんですよ、先生」

 毛利の横から唐沢が言った。

「よしもと・たつお……吉本辰夫って、吉本敦子の弟の?」

「そうなんです。 吉本敦子の弟です。 それで、かけつけたんです。 なんか、敦子がからんだ事件と関係があるのかと思いまして、姉弟ですから。 もしかしたら、また殺しかと……だけど、落雷にあって死んだのは間違いないようです。 目撃者もいますし……正面橋の事件とは関係はないようなんですが、果たしてそうなのか?」

 毛利は事件との関連が分からず、悩んでいるようである。

「私は、やっぱ、怨霊が……関係あるんじゃないかと……思うのですが。 なにしろ、敵同士の血筋が混じったのが辰夫なんですから……これは、ある種、ハイブリッドですよね。 ですから、辰夫の中で、敵同士がぐちゃぐちゃになって、結果、相討ちってことで……それで、落雷が落ちて、決着がついた。 そんなのもありかな、なーんて、如何でしょう?」

 横から唐沢が言った。 毛利は、唐沢の方をチラリと見たが、何も言わない。

「それで、目撃者の話では、吉本辰夫は、どんな状況で落雷にあったんですか?」

 佑太は訊いた。

「吉本辰夫は、そこの橋、法(ほう)成(じょう)橋っていうのですが……その橋の上から池の方をじーっとにらんで立ってたんだそうです、雨の中を傘もささずに。 そしたら、いきなり、ダ―ンと雷が落ちて、吉本辰夫は池の中へ落ちた、そう言うてます、目撃者は」

「目撃した人がいるんですか、落雷の現場を?」

「ええ、なにしろ、土砂降りの中、傘も差さずにずぶぬれになってたようですから、人目を引いたんじゃないでしょうか。 で、目撃者は三人いて、どの目撃者の話も同じでした。 ああ、それから、目撃者のひとりが言うには、吉本辰夫の眼が、赤く光りを放っていたということです。 まあ、それは眼の錯覚かと思いますが……」
 毛利は答えた。
                                             
   続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-11-13-1



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