地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第87回) [ミステリー]
両の袖から黄金の粉が大量に吹き出す。 最初、黄金の粉は、まるで龍のようにうねりながら、杏子の周りを幾度となく舞った。
次に佑太の身体を品定めするかのように撫でたが、すぐに離れ、今度は、福本洋平と沢口絵里香の身体の周りをつむじ風のように黄金の帯となって包みこんでいく。 親子の顔には喜びの色が浮かんでいる。 しだいに、二人の姿は霞んでいく。 そして、とうとう二人の姿は見えなくなった。
福本親子の姿が消えると、黄金の帯は、ゆっくりとゆっくりと天に向かって登って行く。そして、最後は天の彼方へと消えていった。
高貴な女性は、さらに両袖を振る。 袖からはまたしても黄金の粉が吹き出すと、空に舞い上がり塊となるや、しだいに黄金の龍へと姿を変え、たちまち東へ向けて飛んでいった。
高貴な女性は広げたもろ手を降ろすと言った。
「わらわを呼び出した黄金の龍の使いのもの、そなたの願い、叶うようはからいましたぞ。 願いかなえば、善女(ぜんにょ)龍(りゅう)王(おう)が内裏の池に姿を現すことになるでしょう。 さっ、首尾を確かめに行くがよい」
女性は言い終わると、にこやかに微笑み、軽く頷いた。 その途端、女性の姿から色が消え始め、しだいに金色の砂へと変わっていき、まもなく、苔の上に舞い落ちていった。
佑太は、突然顔に冷たいものを感じ、我に返った。 気付くと雨である。 目の前の庭の苔は雨に濡れて光りを放っている。 佑太は傘を開くと杏子の顔を見た。
「さっきの若い女性、名乗ってくれなかったけど……斎王、だよね」
「ええ、私も、そう思います」
「で、善女龍王が姿を現す……内裏の池って、どこだと思う?」
「私、間違いなく、神仙(しんせん)苑(えん)だと思います」
「神泉苑?」
「ええ、平安京の時代の内裏は今の二条城のあたりにあったんです。 そして、その内裏の池が神泉苑なんです。 昔、その神仙苑には善女龍王という龍神が棲むという言い伝えがあって、今も、境内にある法(ほう)成就(じょうじゅ)池(いけ)の中の善女龍王社というところで、お祭されているのですよ」
「そうか、そんな言い伝えがあるんなら、間違いないだろうね、神泉苑で」
そのとき、背後から声がした。
続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-11-11-1
次に佑太の身体を品定めするかのように撫でたが、すぐに離れ、今度は、福本洋平と沢口絵里香の身体の周りをつむじ風のように黄金の帯となって包みこんでいく。 親子の顔には喜びの色が浮かんでいる。 しだいに、二人の姿は霞んでいく。 そして、とうとう二人の姿は見えなくなった。
福本親子の姿が消えると、黄金の帯は、ゆっくりとゆっくりと天に向かって登って行く。そして、最後は天の彼方へと消えていった。
高貴な女性は、さらに両袖を振る。 袖からはまたしても黄金の粉が吹き出すと、空に舞い上がり塊となるや、しだいに黄金の龍へと姿を変え、たちまち東へ向けて飛んでいった。
高貴な女性は広げたもろ手を降ろすと言った。
「わらわを呼び出した黄金の龍の使いのもの、そなたの願い、叶うようはからいましたぞ。 願いかなえば、善女(ぜんにょ)龍(りゅう)王(おう)が内裏の池に姿を現すことになるでしょう。 さっ、首尾を確かめに行くがよい」
女性は言い終わると、にこやかに微笑み、軽く頷いた。 その途端、女性の姿から色が消え始め、しだいに金色の砂へと変わっていき、まもなく、苔の上に舞い落ちていった。
佑太は、突然顔に冷たいものを感じ、我に返った。 気付くと雨である。 目の前の庭の苔は雨に濡れて光りを放っている。 佑太は傘を開くと杏子の顔を見た。
「さっきの若い女性、名乗ってくれなかったけど……斎王、だよね」
「ええ、私も、そう思います」
「で、善女龍王が姿を現す……内裏の池って、どこだと思う?」
「私、間違いなく、神仙(しんせん)苑(えん)だと思います」
「神泉苑?」
「ええ、平安京の時代の内裏は今の二条城のあたりにあったんです。 そして、その内裏の池が神泉苑なんです。 昔、その神仙苑には善女龍王という龍神が棲むという言い伝えがあって、今も、境内にある法(ほう)成就(じょうじゅ)池(いけ)の中の善女龍王社というところで、お祭されているのですよ」
「そうか、そんな言い伝えがあるんなら、間違いないだろうね、神泉苑で」
そのとき、背後から声がした。
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