地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第84回) [ミステリー]
「で、どうします? このまま進みますか?」
「行くしかないだろうな。 さっき、香取さんが言ってた道順で、野宮神社まで行くしかないよ。 さあ、行こう」
佑太と杏子は再び小路を歩き出したが、十メートル程先からは赤いもやでかすんで見えず、妖気が感じられた。
二人は用心深く進んでいく。 しばらくすると、もやの中に二つ赤く光るものが見え、二人は足を止めた。
「あれは?」
傘をつかんでいた佑太の右手の握りが強くなった。 殺気を感じたのである。 佑太が身構えて赤く光るものを凝視すると、呼応するように赤い光も強まる。 それは、何度か繰り返され、睨み合いが続いた。 しかし、最後は行く手を阻むのを諦めたかのように、赤い光は、もやの中に消えていった。
「あの二つの赤い光、何だったのでしょうか?」
光が消えると、杏子が口を開いた。
「何かの眼かな。 僕ら、また、異空間に入り込んだんじゃないかな」
「また、水晶玉のせいでしょうか?」
「いや、水晶玉は熱くはなってないし、光りも放っていないよ。 これは、きっと、地脈の乱れと関係しているよ」
「……とすると、何かの怨霊ですか? 石田三成様とか……」
「あの方の霊は、春屋和尚が鎮めてくれたんだから、たぶん、別な怨霊だろう。 とにかく、先へ進もう」
佑太と杏子は先を急いだ。
十数分程登ると、小路は二手に分かれていた。 佑太は、香取の言葉を思い出して右手に折れた。 しばらく路なりに歩き、橋を渡るとトロッコ列車の駅前に出た。 そこにも、人の姿は見えない。
〈ここから下れば、野宮神社は、十数分だったな……〉
佑太たちは、そのまま急ぎ足で駅舎の横を通り過ぎようとした。 その時、ゴトリと列車の止まる音がした。
二人が足を止めると、駅の中から数人の男女の声が聞こえてきた。
「人の声がするね。 だとすると、元の世界に戻ったのかな?」
「でも、さっきから、あのもやは、かかったままですけど……」
二人が言葉を交わしていると、後ろから声がする。
「おい、待て!」
ふり返ると四人の男女が立っていた。 四人とも眼は真っ赤で、顔には血の気がなく表情もない。
〈この人たちは……被害者の四人じゃないか……とすると……〉
四人のうちの三人は佑太が地縛記憶で見た、福本洋平、山下昇、野垣良子だった。 そして、残りのひとりは高校生くらいの若い女である。 佑太は、それが沢口絵里香だと直感した。
「何か、僕らに御用ですか?」
佑太は訊いた。
「別に……あんたがたに、消えてもらうだけだ」
赤い眼をぎらつかせて山下昇が、木刀を手にじりじりと近づいてくる。 佑太は肩の力を抜き、息を整えると、傘の柄を持つ右手の握りをゆるめた。
続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-11-08-1
「行くしかないだろうな。 さっき、香取さんが言ってた道順で、野宮神社まで行くしかないよ。 さあ、行こう」
佑太と杏子は再び小路を歩き出したが、十メートル程先からは赤いもやでかすんで見えず、妖気が感じられた。
二人は用心深く進んでいく。 しばらくすると、もやの中に二つ赤く光るものが見え、二人は足を止めた。
「あれは?」
傘をつかんでいた佑太の右手の握りが強くなった。 殺気を感じたのである。 佑太が身構えて赤く光るものを凝視すると、呼応するように赤い光も強まる。 それは、何度か繰り返され、睨み合いが続いた。 しかし、最後は行く手を阻むのを諦めたかのように、赤い光は、もやの中に消えていった。
「あの二つの赤い光、何だったのでしょうか?」
光が消えると、杏子が口を開いた。
「何かの眼かな。 僕ら、また、異空間に入り込んだんじゃないかな」
「また、水晶玉のせいでしょうか?」
「いや、水晶玉は熱くはなってないし、光りも放っていないよ。 これは、きっと、地脈の乱れと関係しているよ」
「……とすると、何かの怨霊ですか? 石田三成様とか……」
「あの方の霊は、春屋和尚が鎮めてくれたんだから、たぶん、別な怨霊だろう。 とにかく、先へ進もう」
佑太と杏子は先を急いだ。
十数分程登ると、小路は二手に分かれていた。 佑太は、香取の言葉を思い出して右手に折れた。 しばらく路なりに歩き、橋を渡るとトロッコ列車の駅前に出た。 そこにも、人の姿は見えない。
〈ここから下れば、野宮神社は、十数分だったな……〉
佑太たちは、そのまま急ぎ足で駅舎の横を通り過ぎようとした。 その時、ゴトリと列車の止まる音がした。
二人が足を止めると、駅の中から数人の男女の声が聞こえてきた。
「人の声がするね。 だとすると、元の世界に戻ったのかな?」
「でも、さっきから、あのもやは、かかったままですけど……」
二人が言葉を交わしていると、後ろから声がする。
「おい、待て!」
ふり返ると四人の男女が立っていた。 四人とも眼は真っ赤で、顔には血の気がなく表情もない。
〈この人たちは……被害者の四人じゃないか……とすると……〉
四人のうちの三人は佑太が地縛記憶で見た、福本洋平、山下昇、野垣良子だった。 そして、残りのひとりは高校生くらいの若い女である。 佑太は、それが沢口絵里香だと直感した。
「何か、僕らに御用ですか?」
佑太は訊いた。
「別に……あんたがたに、消えてもらうだけだ」
赤い眼をぎらつかせて山下昇が、木刀を手にじりじりと近づいてくる。 佑太は肩の力を抜き、息を整えると、傘の柄を持つ右手の握りをゆるめた。
続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-11-08-1
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