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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第80回) [ミステリー]

「結果は、どうでしたか?」

 佑太が訊くと、

「毛利、もったいぶらんと、はよ教えて上げんかい」

 桜井が横から助け船を出した。

「はい、わかりました。 実は、先生の勘、ズバリ、当たってました。 まず、吉本敦子の家、つまり、呉服問屋吉本商店は石田三成とは関係、おお有りでした。 吉本の御先祖というのが、石田三成の側近で、石田冶部から拝領した刀、茶器などの逸品が、吉本の家には、かなりの数、あったそうで、代々、家宝として大事に受け継がれとったそうです。
 ところが、敦子の父の代での倒産騒ぎで、その家宝は全部差し押さえにあって、今は何も残っとらんということです。 競売にかけられてどこかの金持ちが手に入れたと言うことになってますが……その金持ちというのが、どうも福本一郎氏ではないかと、言われているのですよ」

「ということは……おねの子孫と言われる福本一郎が、石田側近の子孫の財産を身ぐるみ剥ぎ取った、そういうことですね」

 佑太は言った。

「まあ、悪く言えば……そういうことになりますかね。 ……それと、もうひとつ、面白いことがわかりました」

「面白いこと?」

「はい、面白いというのは、高木洋介の家の方です」

「高木洋介の家のことも、わかったのですね」

「ええ、高木洋介の先祖は……吉本の御先祖の、家来筋に当たります」

 毛利は言った。 話を前もって聞いていたのか、横で桜井が軽く頷いた。

「高木洋介のご先祖は、吉本家の御先祖の家来ですか?」

 佑太は訊いた。

「ええ、そういうことになります。 なんでも、関ヶ原のあと、その主従関係にあった御先祖同志が助け合って、ほうぼう逃げ回ったらしいのです。 そして、最後は、九州の南の果て、薩摩に落ちのびて、そこで肩寄せ合って暮らしとったそうなんですが、幕末近くになって、どさくさに紛れて子孫の一部が京都へ舞い戻って、呉服問屋を起こした、ということらしいです。 
 それと、実は、敦子の父親の旧性が高木でして、元をたどれば、敦子の父親も高木家の子孫で、高木洋介とは遠い親戚に当たる、そういうことです。 
 ああ、それから、殺された山下昇と野垣良子、こっちの方は、調べた範囲では、石田家やおねの実家木下家と関係あるのかないのか、全くわかりませんでした。 というわけで、山下昇と野垣良子以外は、関ヶ原における敵同士の因縁のある関係だということになります」

「そうですか。 いや、貴重な情報です。 有難うございました。 あとは……マスターだけですね、正体も、素性も皆目見当がつかないのは」

「そういうことです。 ミスターかミスか、ミセスなのかわかりませんが、謎の人物Xの、まんまです」

 毛利はため息をついた。
                                          
  続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-10-31-1

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