地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第74回) [ミステリー]
「そうです。 そいつの指示で、高木も、山下昇も、殺人を犯したわけですから……殺人教唆ということで、殺人と同じ、いや、もっとたちが悪いのではと、私は思ってます。
で、そのマスターというのは、オンラインゲームを利用して、殺人を教唆していたのですから、ゲームの利用者であるのは、間違いないと思って、色々手を回して、何人かの利用者に目星をつけて調べてみたのです。ですが……残念ながら、いずれもシロでした。
おそらく、マスターという人物は、巧妙に、他人のIDやパスワードを利用して、うまく正体を隠しているのですよ。 マスターと言うだけあって、かなり頭のいいやつなのでしょう、きっと」
毛利は、いまいましげに言った。
「そうですか。 ですが、おそらく、高木洋介の取り調べで、マスターに関してはともかく、なぜ殺人の指示がなされたのかは、分かるような気がします、これは、僕の勘なんですが。 ところで、福本一族の方の調べはついたのですか?」
佑太は訊いた。
「はい、福本一族の方は、課長の一押しだった福本洋平婦人も、私が疑っていた姉夫婦も、いずれもアリバイはしっかりとしてまして、少なくとも実行犯ではあり得ないということに」
毛利は答えた。
「そうでしたか。 じゃあ、やはり、高木洋介の取り調べが事件解決のカギを握っているかもしれないですね」
佑太が言うと、毛利は頷いた。
「以上が、現在の捜査状況ですが……何か、先生からアドバイスはありませんか?」
毛利の言葉には、佑太への全幅の信頼が籠っている。
「今のところは、特に。高木洋介の取り調べで何か新しいことが出てきましたら、お知らください、僕にできることがあるかもしれませんので」
「はい、わかりました。 有難うございます。 今後ともよろしくお願いします」
毛利は言った。
佑太たち二人が、府警本部を出て、下立売通を東に向かうと御所が眼に入った。 数ブロックも歩くと、烏丸通にぶつかる。 二人は下立売御門から京都御苑に入った。
「どうですか、水晶玉に反応あります?」
杏子が訊くと、佑太は頭を振った。
「全く、ないよ。 だけど、まだ御苑の入口だからね。 もう少し奥に行ってみるか」
二人は、さらに一時間余り、京都御苑内で水晶玉が熱を持つ場所がないか、探して回った。
〈足、重たいな……〉
佑太は、疲れを覚えていた。 時計を見ると、時刻はすでに四時過ぎである。
「反応がないな。 今までだと、標的の数百メートル以内になると、水晶玉は必ず反応してたんだけどね。 おかしいな」
佑太は、温もりのない守り袋を握ったまま考え込んでしまった。
「もしかしたら、ここではなかったのかしら?」
杏子も、疲れてはいるはずだが、表情は明るい。 その顔を見て、佑太は、めいっていた気分が和んだ。
その時、杏子のケータイの着信音が鳴った。
「誰からかしら?」
杏子がメールを見ると、兄の三四郎からだった。
続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-10-25-1
で、そのマスターというのは、オンラインゲームを利用して、殺人を教唆していたのですから、ゲームの利用者であるのは、間違いないと思って、色々手を回して、何人かの利用者に目星をつけて調べてみたのです。ですが……残念ながら、いずれもシロでした。
おそらく、マスターという人物は、巧妙に、他人のIDやパスワードを利用して、うまく正体を隠しているのですよ。 マスターと言うだけあって、かなり頭のいいやつなのでしょう、きっと」
毛利は、いまいましげに言った。
「そうですか。 ですが、おそらく、高木洋介の取り調べで、マスターに関してはともかく、なぜ殺人の指示がなされたのかは、分かるような気がします、これは、僕の勘なんですが。 ところで、福本一族の方の調べはついたのですか?」
佑太は訊いた。
「はい、福本一族の方は、課長の一押しだった福本洋平婦人も、私が疑っていた姉夫婦も、いずれもアリバイはしっかりとしてまして、少なくとも実行犯ではあり得ないということに」
毛利は答えた。
「そうでしたか。 じゃあ、やはり、高木洋介の取り調べが事件解決のカギを握っているかもしれないですね」
佑太が言うと、毛利は頷いた。
「以上が、現在の捜査状況ですが……何か、先生からアドバイスはありませんか?」
毛利の言葉には、佑太への全幅の信頼が籠っている。
「今のところは、特に。高木洋介の取り調べで何か新しいことが出てきましたら、お知らください、僕にできることがあるかもしれませんので」
「はい、わかりました。 有難うございます。 今後ともよろしくお願いします」
毛利は言った。
佑太たち二人が、府警本部を出て、下立売通を東に向かうと御所が眼に入った。 数ブロックも歩くと、烏丸通にぶつかる。 二人は下立売御門から京都御苑に入った。
「どうですか、水晶玉に反応あります?」
杏子が訊くと、佑太は頭を振った。
「全く、ないよ。 だけど、まだ御苑の入口だからね。 もう少し奥に行ってみるか」
二人は、さらに一時間余り、京都御苑内で水晶玉が熱を持つ場所がないか、探して回った。
〈足、重たいな……〉
佑太は、疲れを覚えていた。 時計を見ると、時刻はすでに四時過ぎである。
「反応がないな。 今までだと、標的の数百メートル以内になると、水晶玉は必ず反応してたんだけどね。 おかしいな」
佑太は、温もりのない守り袋を握ったまま考え込んでしまった。
「もしかしたら、ここではなかったのかしら?」
杏子も、疲れてはいるはずだが、表情は明るい。 その顔を見て、佑太は、めいっていた気分が和んだ。
その時、杏子のケータイの着信音が鳴った。
「誰からかしら?」
杏子がメールを見ると、兄の三四郎からだった。
続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-10-25-1
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