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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第72回) [ミステリー]

「それがな、唐沢さんのお手柄なんでっせ。 なにしろ、今朝早うから高木を見張っといてな、逃げる高木のあとを追いかけて、唐沢さん、新幹線に乗り込まはったそうですのや。 お蔭で、帝都警視庁さんに協力してもろうて、東京駅のホームで御用、ちゅうことになったんです。 ほんま助かりましたわ。 毛利が、ええ後輩持っとうて、よかったちゅうことでんな。 なあ、毛利、ハッハッハハ」

 話を振られた毛利は顔を崩した。

「それで、唐沢さんは、新幹線で、東京まで行かれて、今はどちらに?」

 佑太は訊いた。

「唐沢も、高木と一緒にこっちへ戻って来ますよ 。なにしろ、奥さん、こっちに残したままですからね。 でも、あいつ、なかなか、やりますよ、新婚の奥さん残して、容疑者を追いかけるんですから。 奥さんには私からも謝ろう思ってます」

 毛利は笑いながら言った。

「そうでしたか、ぜひ、お願いします」

「ところで、さっき唐沢から連絡があったのですが、高木の様子が、なんか変だったと言うのです」

 毛利が、今度は、訝しげに言った。

「様子が変だと言いますと……」

 佑太は訊いた。

「それが……新幹線から降りて、逮捕して身柄を拘束したときは、目付き鋭く、ふてぶてしい笑いを浮かべて、何を訊かれても答えんかったのに、しばらくしたら、何があったんか、急に素直になって、ぺらぺらと訊かれてもないことまで、自白しだしたそうなんです。 特に、プレッシャーを、かけたわけでもないのにですよ。 何か、憑いてたもんでも落ちたかのようで、その豹変ぶりには驚いたと、唐沢が言ってました」

「態度が変わった、ですか? それは……何時頃か、わかりますか?」

佑太は訊いた。

「時刻ですか? ちょっと待ってください、今、唐沢に訊いてみますから……」

 毛利は、ケータイを取り出した。

「はい、毛利だが。 世話になるな……ところで、お前、さっき言うたやろ、高木の態度が急に変わったとか。 それ、何時頃か、わかるか? ……ああ、それで……なるほどな。 新幹線が着いたんが、午前十一時三十三分、それで逮捕したんが……十一時三十四くらい……そいで……ああ、態度変わったんは御昼前、ああ、だいぶ前、ほなら、十数分で態度ががらりか……ああ、わかった。 じゃあ、またあとで」

 毛利はケータイを切ると、佑太の顔を見た。

「逮捕が十一時三十四分ころで、態度が変わったんが、それから十数分後、昼前十数分、というところだそうです、唐沢の話では」

 佑太はその時刻が、大徳寺で黒い水晶玉に 『義』 が印字されて、石田三成の怨念が解消された時刻と一致するのに気づいた。

〈これは、偶然だろうか? いや違う、偶然などではない! この事件は、やはり……〉

 佑太は、石田三成の怨念が高木を動かしていたのではと思ったのである。

「どうかしましたか? 気分でも……」

 毛利が、心配げに、佑太を見た。
                                          
  続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-10-23-1

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