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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第71回) [ミステリー]

 佑太は、守り袋を取り出した。 中を確かめると、 『義』 の文字が刻まれた黒い水晶玉を含めて、四個の珠が揃っている。

「これですべての水晶玉に文字が刻まれたから、僕の方の仕事は済んだと思うけど……あとは、杏子の守り袋の白い砂、それと例の紙切れの文言か。 それ、『仁』と、関係あると思うよ」

「そうですね」

「それに、伊勢の斎王って、どっかで聞いたことがあるんだけどさ。 杏子、君は、聞いたことないかな?」

 佑太は訊いた。

「斎王というのは、確か、伊勢神宮と賀茂神社で、巫女(みこ)として天皇に代わって御奉仕された未婚の内親王や女王のことですよ。 でも、伊勢の斎王は、南北朝時代の後醍醐天皇のときに、賀茂神社の斎王は鎌倉時代に、途絶えているはずなんです」

「えっ、知ってたの。 で、斎王が天皇の娘さん、お孫さんってことは……伊勢の斎王の生れし清き緑って、もしかすると、内裏にあるってことかな」

「そうかもしれないですね。 じゃあ、御所に行ってみます?」

 佑太は時計を見た。 時刻は、午前十一時五十三分である。

「ぜひ、御所には……だけど、もう、この時刻だから、お昼を済ませてからにしよう」

 二人は、一度ホテルに戻ることにした。


第四章

 昼食が終る頃、佑太のスマホに毛利からメールが入った。 メールには、『事件捜査に進展がみられました。 御報告したいことがありますので、本日、府警本部にお越しいただけないでしょうか』 とある。

 佑太は、毛利の希望に応えることにした。

 佑太と杏子が府警本部に着き、受付に顔を出すと、すぐに、捜査一課の桜井の部屋に通された。 時刻は、午後二時前である。

「お蔭さまで、映画村事件の実行犯を逮捕できました」

 満面に笑みをたたえて、桜井が言った。

「逮捕って……高木洋介と吉本敦子をですか?」

「ええ、そうです。 高木洋介が主犯で、吉本敦子が赤いかつらを被ってた女ちゅうことです。 もっとも、吉本はこの件では、殺意はなかったと言ってますが。 それから、吉本は、正面橋での福本洋平殺しには、手を貸したこと、認めてます。 こっちは、高木が主犯で、吉本は共犯ということですな。 高木の身柄は、今日中にも、こっちへ着くと思いますが……」

「今日中に着く……ってことは、どこかへ逃亡でもはかったんですか?」

「ええ、そういうことですな。 あやつ、新幹線使って、東へ逃げたんですわ。 成田から海外へ逃げよう思たんでしょうな。 うちだけやったら、取り逃がしたかもしれまへんな、おそらく」

「うちだけやったらって、誰か他に?」

 佑太の問いに、桜井の顔がゆるんだ。
                                  
   続く http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-10-22-1

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