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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第54回) [ミステリー]

「オッケーです。安藤先生も奥様も、雨の中を遅くまで有難うございました。 私は、もう少し、毛利先輩に付き合って、それから女房のところへ帰りますから」

「唐沢さんの奥さんは、ホテルにひとりでほったらかされて、大丈夫だったんですか?」

 佑太は心配げに言った。

「まあ、うちのやつはああ見えても、案外物分り、いいんですよ。 それに、遊んでたわけじゃないですし、あいつも警察官ですから、そこらあたりは……はい」

 唐沢はそう言って笑った。

「では、僕たち、これで失礼します。 何か御用があれば、いつでもケータイにかけてください」

 佑太は、この先も捜査には協力を惜しまないつもりだった。 彼は、毛利と唐沢に挨拶をすると、杏子と二人、雨の中を京都府警の車で、西都キャピタルホテルへと帰っていった。


第三章

 翌日は、前夜からの雨が止まず、さらに雨足が強くなっていたが、捜査は一気に進展する日となった。

 毛利は、朝の内に、鑑識からの報告を受けた。

 それによると、佑太の言った通り、福本の財布に残された指紋と映画村で殺された山下昇の指紋は一致した。 毛利は、上司の桜井課長にそのことを報告し、山下昇と野垣良子が同棲していたアパートの部屋の家宅捜索をすることを決めた。

 一方、高木洋介が山下昇と野垣良子殺害の犯人である証拠はつかめず、まずは重要参考人として、任意で事情を訊くことに決め、朝一番で高木に連絡を入れ承諾を得た。

 ところが、約束の午前九時を過ぎても高木は姿を現さなかった。 不審に思った毛利は、午前九時十五分に高木のケータイにかけてみたが、応答はなく、彼の通う大学院に問い合わせても、朝から来ていないとの返事だった。

 そこで、毛利は、雨の中、高木のマンションを訪ねてみた。 すると、高木は不在で、隣室の女に訊くと、、午前八時半頃に旅行鞄を持った高木が部屋から出ていく姿を見たということだった。

 そのため、毛利は管理人に頼んで、高木の部屋を開けてもらい、単独で捜索を行った。しかし、調べた範囲では事件捜査の手がかりとなるようなものは見つからなかった。 この時は、毛利はほぞをかむ思いだったが、事件は別な方から進展をみることになった。

 毛利は、高木洋介の共犯者である可能性が高い、吉本敦子の右京区にある自宅へ連絡を入れてみた。 彼は、吉本敦子はすでに高木と共に姿を消したと予想していたのだが、意外にも自宅にいた。

 吉本は、自分は高木の恋人ではなく、男女の関係もなく、ただ、大学のサークル仲間だっただけと述べた。 そして、実にあっさりと犯行を認めて自首する旨を告げた。
                                        
   続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04-1
                                              

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