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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第53回) [ミステリー]

「高木という大学院生は、妙に瞬きの多い男じゃないですか。 背は僕と同じくらいで、180センチくらいの痩せた男ですね」

 佑太は答えた。

「ええ、そうです。 よく、分かりますね。 それで、高木がどうかしたのですか?」

 毛利は不思議そうに訊いた。

「高木ですよ、福本さんをこの橋から転落させて殺したのは。 共犯者は一緒にいた女です。 その女も洛北大学の大学院生だったですよね」

「高木ですか、実行犯は? 一緒にいた女は、吉本敦子、先生の言われるように洛北大学の大学院生です。 目撃者、第一発見者が犯人ってことですか? でも、山下昇と野垣良子が一緒に目撃していたことになってますが……」

「確かに、山下と野垣も一緒にいたのですが……彼らはこの橋から、意識のない坂口絵里香さんを川へ投げ込んでます、福本さんが転落する前ですが」

「ええっ、じゃあ、福本殺しは高木たち二人、絵里香殺しは山下と野垣ってことですか? ……で、その四人が目撃者として、矛盾のない証言をしていた。 高木たちは事件現場で証言していますが、山下たちは下京署へ出頭してきて証言、つまり、別々に証言しているのですが……その内容に、矛盾はなかったのです」

「それが、事前に彼ら四人は、指示を受けていたんです、マスターと呼ばれる人物に」

「マスター?」

 毛利は首をひねった。 彼は、佑太の説明があまりにも具体的、断定的なので、何故そこまで言えるのか不可解で、まだ消化できないでいた。

「そうです。 マスターと呼ばれる人物が裏にいるのです」

「マスターとは、いったい……」

 毛利の言葉を遮り、佑太は話を続けた。

「マスターが何者かは、今のところ分かりません。 しかし、目撃者となった四人をコントロールしていたのが、そのマスターであるのは間違いないようです。 そして、高木が山下と野垣を毒殺した、それは何のためか? 高木の一存なのか? マスターの指示なのか? それも今は分かりません。 それから、福本の内ポケットにあった財布から山下は一万円札だけを十数枚、抜き取っています。 たぶん福本の財布には山下の指紋が残っていると思いますから、確かめてください」

 佑太が具体的な証拠として指紋のことに触れると、毛利の表情が変わった。

「指紋ですか? 福本の財布は証拠品として保管していますから、すぐに調べてみます。 先生のプロファイリングによると、映画村殺人事件の犯人は高木洋介。 そして、共犯者の女は、吉本敦子である可能性が高い、そういうことですね」

「そうです。 高木が主犯であることは確かです。 赤いかつらの女は、断定はできませんけど、吉本敦子ではないかと……」

 佑太は言った。

「分かりました。 さっそく、その線で、捜査を進めることにします。 では、私はこれで。安藤先生と奥様は、本部の車を待たせていますので、それでホテルまでお帰りください。 唐沢は、俺があとでホテルまで送るから、それでいいよな」
 
 毛利の声には精気がみなぎっていた。
                                        
 続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-10-03-1

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