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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第46回) [ミステリー]

〈 『雨乞いに利を得た高僧の塔へ入れ。 そこに朱玉の珠を待つものあり』 だったな。 雨乞いっていったいなんだ? 昔、雨乞いなんてやったのか、京都のどこかで……それに利を得たってことは、勝ったってこと……ということは、雨乞い合戦みたいなものが、京都のどこかであったのか? 桜井さんなら、もしかして……訊いてみるか〉

 佑太は、桜井の顔を見た。

「桜井さん、つかぬことを伺いますが……昔、京都のどこかで雨乞いを、誰かが競ってやった、そんな話、聞かれたことはありませんか?」

 佑太は、京都に長く住む桜井課長であれば、何か知っているのではと思ったのである。

「雨乞い? 京都で、雨乞いの競争、ですか?」

 桜井は佑太の唐突な問いに、やや戸惑いを見せた。 

「雨乞い、雨乞いな。……ああ、そうや。 そやった、そやった。 雨乞いを競ったいうたら、昔、平安の御世(みよ)に、東寺と西寺で、雨乞いを競い合った話なら、聞いたことあります」

「平安……時代に、東寺と西寺でですか?」

「ええ、そうです」

「場所は、わかりますが?」

「場所は、確か、その当時、大内裏の南にあった神泉苑やったと思いますが……今は、真言宗のお寺になってますがな。 元々は、天皇さんのための庭園やったとこです。 ちょっと、調べさせてみまひょ。 おい、毛利、誰かに調べさせてくれへんか、私の記憶やと当てにならへんからな」

「分かりました。 安藤先生、ちょっと待っててください」

 毛利はそう言うと、部屋から出た。

「安藤先生、雨乞いが今度の事件に、なんや関係ありますのか?」

 桜井は訝しげな顔で訊いた。

「いえ、直接の関係はないかと思いますが……ちょっと気になることがありますので……」

 佑太は本当の理由を語らなかった。 地脈の乱れを鎮めることに関しては、杏子と二人だけの秘密にしておくべきだと考えていたからだったが、桜井はそれ以上突っ込んで訊くことはなかった。

「ところで、先生、プロファイリングなんて、いつ勉強されたんですか? 先生はお医者さんですやろ。 お医者さんが、なんで、そないなもんまで」

 桜井は、小太りの身体を乗り出して訊いた。

「いえ、特に勉強したわけでは。 ある時、事件現場を観察していたら、犯人像が見えてくることに気付いた、ということです」

 佑太は、地縛記憶には触れなかった。

「そうですか。 そやったら、先生には元々プロファイリングの才が備わっとった、そういうことになりまんな。 そら、天性やな。 天性や天性や」

 桜井は妙に納得していた。

「桜井さん、被害者の沢口絵里香ですけど……彼女は、事件当日、西都キャピタルホテルの一階レストランで福本さんと食事をしてたはずですが、そのあと彼女が何をしてたのか? 彼女の行動というか、足取りというか、それについて、調べがついているのなら、教えていただけませんか?」

 佑太は訊いた。
                               
  続く ⇒ http://shiratoriksecretroom.blog.so-net.ne.jp/2013-09-26-1

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